2013年5月4日土曜日

にかほ高原

みなさん GWはいかがお過ごしでしょうか?

ここ数年はすっきりとした天気に恵まれていませんが、今年は例年にも増して寒いGWになっています 本来の清々しい「にかほ高原」を満喫してほしいのですが、後半にならないと太陽が出ずらい予報になっています 山の上は寒いのでは?と心配される方もいるかもしれませんがご安心を。

リニューアルに伴い、店内は広くなり暖房も完備してあります 心置きなくソフトクリームを食べてください


さて、今では公文書にも使われるようになった「にかほ高原」ですが、25年前までそんな地名は存在していませんでした

25年前私は小学生でした 父と母に連れられて、姉妹と一緒に初めてここに来た時のことをはっきりと覚えています その頃ここは地名では 「 巾山(ハバヤマ) 」と呼ばれていました 畜産関係者の間では県の第一次酪農建設隊があったこともあって「 一次建 」とも呼ばれていましたが、ほとんど離農して数年経ったあとでした

それまでは隣の隣の町で夏山冬里方式で牛を飼っていました 夏の間だけ山に上げ放牧し、冬が来る前に里に戻し牛舎内で飼うやりかたです 両親はこのやり方を続けていく中で、一年を通じて牛を放して飼いたいと思うようになったと後になって聞きました そしてそれを実現するためにここに来たのです

離農跡地でしたので牛舎も牧草地も荒れていました 牛舎はやれるところは自分たちで作り、出来ないところは大工さんに頼みました 牧草地はもっと酷かった 一見良さそうに見える草地も、掘り起こしてみると大きな石がゴロゴロ 今でも覚えているのは、搾乳だけ終わらせるといなくなる父、その後の作業を母と二人で終わらせる 家に帰り風呂に入ってご飯を食べた後、お茶とおにぎりを持って母と2人で牧草地へ そこには、掘り起こした牧草地の真ん中で、そんなに大きくないパワーショベルで、一心不乱に大きな石を取り除いている父の姿がありました そうやって土地を整備し、種を蒔き、杭を打ち、有刺鉄線を張り 初めて牛を放した時の感動は今でも忘れられないと両親は言います

また、冬の厳しさも特筆すべき経験でした それまでに経験した事のない猛烈な吹雪 その頃、牛舎の構造上、搾乳後必ず牛を外に出さなければいけませんでした 外に出し、寝床を作って干草を置き、牛を入れる頃には牛は吹雪によって雪が付き全身真っ白な雪まみれ 目だけ瞬きをするので雪がつきません 雪の塊に目だけ付いたものが一目散に舎内に入ってくる その雪が解ける すると湯気が発生し、舎内が真っ白になる そんな日はザラでした 今でも牧場の近くでは 「ここの吹雪は南極に吹くブリザードに酷似している」という理由で 南極で使う風力発電機の実験も行われています



そんなある日、突然父が「電話を受けるときは はい、にかほ高原の土田牧場です と言いなさい」と言いました それからというもの、電話を受けるときも、かけるときも、宅急便も郵便物も、全ての土田牧場の前に「にかほ高原」が付くようになりました これが「にかほ高原」の始まりです



今、にかほ高原には土田牧場と「ひばり荘」という市営の休憩施設しかありません

「にかほ高原」が自分たちの物だという考えは全くありませんが、この地で放牧酪農を営み、本物を、美味しいものをお客様に提供してきたという誇りはあります ですが、最近にかほ市にできた複合観光施設で土田牧場の製品を使ってもいないのに「にかほ高原の乳製品」と銘打っているところがあります この25年間を踏みにじられた思いです

父はこの件に関し、「俺は何も言わない」と言っています ただ私は、ここまでの両親の苦労を知っているのでここに書かせてもらいました ここまで読んで下さりありがとうございました